見積もりを出した時点では利益が出るはずだった。しかし着工までの2ヶ月間で、塩ビ管の仕入れ価格が15%上がった。断熱材も値上がりした。塗料も上がった。見積もり通りの金額で請け負うと、材料費の増加分がそのまま利益を食う。
一人親方や小規模の建設業者にとって、材料費の高騰は死活問題です。元請けとの契約金額は固定。しかし材料費は日々変動する。この「固定された収入」と「変動する支出」のギャップが、建設業の資金繰りを構造的に苦しくしています。
この記事では、建設業・一人親方の資金繰りがなぜ苦しいのかを構造的に解説し、材料費高騰の時代を生き残るための具体策を紹介します。
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ナフサ価格が建設資材に与える影響
「ナフサ」という言葉を聞いたことがない一人親方も多いかもしれません。しかし、現場で毎日使う資材の価格は、ナフサ価格に直結しています。
ナフサは原油から精製される石油化学製品の基礎原料です。ナフサからエチレン、プロピレンなどの化学品が作られ、それがプラスチック、塩化ビニル、合成樹脂、塗料、接着剤、断熱材などの原料になります。
建設業でナフサ価格の影響を受ける主な資材。塩ビ管(PVC管):給排水工事の主力資材。ナフサ→塩化ビニル樹脂→塩ビ管。ナフサ価格が10%上昇すると、塩ビ管の価格は数ヶ月後に5〜15%上昇する傾向がある。
断熱材(発泡ウレタン・スタイロフォーム等):ナフサ→ポリウレタン原料→断熱材。住宅の省エネ基準強化で使用量が増加しており、価格上昇の影響が大きい。
塗料・シーリング材:ナフサ→溶剤・合成樹脂→塗料・シーリング材。外壁塗装、防水工事で大量に使用。
接着剤・シール材:ナフサ→合成ゴム・合成樹脂→接着剤。内装工事、床材施工で使用。
電線被覆材:ナフサ→ポリエチレン→電線の被覆。電気工事で大量に使用。
防水シート・養生シート:ナフサ→ポリエチレン→シート類。
つまり、建設現場で使われる資材の多くが石油化学製品であり、ナフサ価格の上昇はほぼすべての資材価格に波及します。2022年以降のナフサ価格の乱高下により、建設資材の価格は2020年比で20〜40%上昇した品目もあります。
一人親方・小規模建設業の資金繰りが特に厳しい理由
大手ゼネコンは材料費の高騰を契約に反映できます。しかし一人親方や小規模の建設業者は、以下の構造的な理由で価格転嫁が難しい。
理由1:元請けとの力関係。下請け・孫請けの立場では、「材料費が上がったので追加請求します」と言いにくい。「それなら他の業者に頼む」と言われるリスクがある。
理由2:見積もりから着工までのタイムラグ。見積もり時点と実際の施工時点で、材料費が大きく変動する。見積もり時には利益が出る計算だったのに、着工時には材料費が上がり赤字になる。
理由3:材料費の立て替え負担。一人親方は材料を自分で仕入れて施工するケースが多い。材料費は先払い。元請けからの入金は施工完了後、さらに翌月末。この「立て替え期間」が長いほど資金繰りは苦しくなる。
理由4:支払いサイトが長い。建設業界の支払いサイトは「月末締め翌月末払い」が一般的で、大手ゼネコンでは「翌々月末払い」も珍しくない。材料費を先払いして施工し、入金は2〜3ヶ月後。その間の資金を自分で賄う必要がある。
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材料費高騰を価格転嫁する具体的な方法
「材料費が上がった分を元請けに転嫁する」ことは、下請法や建設業法の観点からも正当な行為です。
方法1:契約時にスライド条項を盛り込む。スライド条項とは「材料費が一定割合以上変動した場合、契約金額を見直す」条項です。公共工事では全体スライド条項・単品スライド条項が導入されていますが、民間工事でも同様の条項を契約書に盛り込むことが可能です。
新規の契約から「材料費が10%以上変動した場合は協議の上、請負金額を変更する」と明記する。既存の契約でも、大幅な材料費高騰があれば協議を申し入れることは正当です。
方法2:見積もりの有効期限を短くする。見積書に「有効期限:発行日から14日間」と記載する。有効期限を過ぎた場合は、材料費の再見積もりを行う。従来の「見積もり有効期限1ヶ月」を短縮することで、材料費変動のリスクを縮小できる。
方法3:材料費と人工(にんく)を分けて見積もる。見積書を「材料費」と「施工費(人工)」に分けて記載する。材料費が変動した場合は、材料費の部分だけを変更する交渉がしやすくなる。「人工は据え置きですが、材料費は実勢価格に基づいて調整させてください」と伝える。
方法4:国土交通省の「価格転嫁円滑化ガイドライン」を活用する。国土交通省は建設業における価格転嫁を推進しており、下請取引の適正化に関するガイドラインを公表しています。元請けが一方的に価格転嫁を拒否することは、建設業法上の問題となりえます。この事実を知っておくだけで、交渉の際の心理的な支えになります。
材料費の立て替え負担を軽減する資金調達
材料費の立て替え期間中の資金繰りを支える方法です。
ファクタリングで元請けへの売掛金を即日現金化する。施工完了後、元請けに請求書を発行した時点で、その売掛金をファクタリングで即日現金化できます。翌月末や翌々月末の入金を待たずに、今日現金を手にできる。
ペイトナーファクタリング:最短10分。手数料一律10%。1万円から。請求書のみで申込可能。
ラボル:最短60分。手数料一律10%。365日対応。
OLTA:最短即日。手数料2〜9%。建設業の売掛金にも対応。
例えば、元請けへの請求額100万円(入金は翌々月末)をOLTAでファクタリング → 手数料5万円(5%の場合)→ 手取り95万円が即日入金。この95万円で次の現場の材料費を仕入れる。元請けからの入金を2ヶ月待つ必要がなくなる。
ファクタリングの詳細はファクタリングおすすめ比較7選を参照してください。
ビジネスローンで運転資金を確保する。材料費の立て替え資金として、AGビジネスサポート(最短即日・業歴制限なし)やGMOあおぞらネット銀行あんしんワイド(年0.9〜14.0%・決算書不要)で運転資金を借入する。元請けからの入金後に完済する前提で短期借入する。
ビジネスローンの比較はビジネスローンおすすめ比較8選を参照してください。
建設業の資金繰りを構造的に改善する5つの施策
施策1:材料の共同購入。同業の一人親方と共同で材料を大量購入し、スケールメリットで仕入れ単価を下げる。建材店との交渉で「月間の購入量をまとめるので、単価を下げてほしい」と提案する。
施策2:元請けの「材料支給」を交渉する。材料を自分で仕入れるのではなく、元請けに材料を支給してもらう「材料支給方式」を交渉する。材料費の立て替え負担がゼロになり、価格変動リスクも元請けが負う。一人親方は施工費(人工)のみを請け負う形になる。
施策3:支払いサイトの短縮を交渉する。元請けに「翌月末払い→翌月15日払い」への変更を交渉する。建設業法では「注文者は、できる限り短い期間で代金を支払うよう努めなければならない」と定められている。
支払いサイトの交渉は支払いサイト短縮の交渉術を参照してください。
施策4:資金繰り表で材料費の支払い時期と入金時期を可視化する。現場ごとに、材料費の支払い日と元請けからの入金予定日を一覧にする。「この現場は材料費先払いで入金は2ヶ月後。その間に○万円の立て替えが発生する」と事前に把握できれば、ファクタリングやビジネスローンの準備を事前にできる。
資金繰り表の作り方は個人事業主の資金繰り表の作り方を参照してください。
施策5:複数の元請けと取引する。1社の元請けに依存していると、その元請けの支払いサイトや価格条件に縛られる。複数の元請けと取引することで、条件の良い元請けを選べるようになり、交渉力も向上する。
取引先の分散は取引先が1社だけの個人事業主のリスクと対策を参照してください。
資金繰り改善の全体像はキャッシュフロー改善の方法7選を参照してください。
資金調達の正しい順番は個人事業主の資金調達は順番が9割を参照してください。
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