仕入先から「来月からナフサ価格の上昇を反映して、原材料を15%値上げします」と通知が来た。しかし、納品先との契約価格は固定されている。15%の原材料費アップをそのまま吸収すると、利益が飛ぶ。
中小製造業にとって、ナフサ価格の急騰は事業の存続に直結する問題です。大手メーカーであれば先物取引でリスクヘッジできますが、中小企業にはその余裕がない。原材料費が上がればそのまま利益が減少し、資金繰りが一気に悪化します。
この記事では、ナフサ価格が製造業に与える影響を具体的に解説し、原材料費高騰への緊急対応策と中長期的な戦略を紹介します。
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ナフサショックとは何か:製造業への影響経路
ナフサは原油を蒸留して得られる石油化学製品の基礎原料です。ナフサからエチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基礎化学品が生成され、これらがプラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料、接着剤、洗剤など、あらゆる工業製品の原料になります。
ナフサ価格が急騰する「ナフサショック」が起きると、以下の順序で製造業全体に波及します。
第1段階(1〜2ヶ月後):石油化学メーカーがナフサ価格の上昇を反映して、エチレン・プロピレン等の基礎化学品を値上げ。
第2段階(2〜4ヶ月後):樹脂メーカー、塗料メーカー、フィルムメーカー等が基礎化学品の値上げを反映して、樹脂ペレット、塗料、包装フィルム等を値上げ。
第3段階(3〜6ヶ月後):中小製造業(成形加工、塗装、包装等)が原材料の値上げ分を負担。納品先への価格転嫁ができなければ、利益が大幅に減少。
つまり、中小製造業はサプライチェーンの「下流」に位置するため、ナフサ価格の上昇が最後に到達し、しかも価格転嫁が最も困難な立場にあります。
ナフサ価格の影響を受ける製造業の業種
プラスチック成形加工業。ナフサ→エチレン→ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)→プラスチック製品。原材料である樹脂ペレットの価格がナフサに直結。ナフサが10%上昇すると、樹脂ペレットは2〜3ヶ月後に5〜15%上昇する。
ゴム製品製造業。ナフサ→ブタジエン→合成ゴム→ゴム製品。自動車部品、工業用ゴム製品の原材料費に直結。
塗料・コーティング製造業。ナフサ→溶剤(トルエン、キシレン等)+合成樹脂→塗料。溶剤と樹脂の両方がナフサ由来であり、ダブルで影響を受ける。
包装資材製造業。ナフサ→ポリエチレン→フィルム・シート→包装資材。食品、日用品の包装資材はナフサ価格に敏感。
接着剤・シーラント製造業。ナフサ→合成樹脂・合成ゴム→接着剤。建設、自動車、電子部品の製造に使用。
化粧品・洗剤製造業。ナフサ→界面活性剤→洗剤、シャンプー、化粧品。容器(プラスチック)もナフサ由来。
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原材料費高騰への緊急対応(最初の1ヶ月)
原材料費の値上げ通知を受けた時点で、以下の緊急対応を行ってください。
対応1:現在の在庫を確認し、値上げ前の価格で追加発注できるか確認する。仕入先に「旧価格での最終発注」が可能か問い合わせる。1〜2ヶ月分の在庫を旧価格で確保できれば、その間に価格転嫁の交渉を進められる。ただし、過剰な在庫は資金を固定するため、「価格転嫁の交渉が完了するまでの期間」を見積もって適正量を発注する。
対応2:納品先への価格転嫁交渉を即座に開始する。仕入先からの値上げ通知書をエビデンスとして、納品先に「原材料費の高騰により、製品価格の見直しをお願いしたい」と申し入れる。仕入先の値上げ通知書を添付することで、「自社の都合」ではなく「市場環境の変化」であることを示す。
対応3:手元資金を確保する。原材料費の値上げは、仕入れ代金の増加→手元資金の減少→資金繰りの悪化、という流れで資金繰りを直撃します。値上げ前に手元資金を厚くしておくことが重要。
ファクタリングで売掛金を即日現金化する。ペイトナーファクタリング(最短10分)、ラボル(最短60分)、OLTA(最短即日・手数料2〜9%)。納品先への売掛金を早期に現金化し、値上げ後の原材料の仕入れ資金に充てる。
ファクタリングの詳細はファクタリングおすすめ比較7選を参照してください。
ビジネスローンで運転資金を確保する。原材料費の増加分をカバーする運転資金として、AGビジネスサポート(最短即日)やGMOあおぞらネット銀行あんしんワイド(年0.9〜14.0%)を検討。
ビジネスローンの比較はビジネスローンおすすめ比較8選を参照してください。
価格転嫁交渉の具体的な進め方
中小製造業が納品先に価格転嫁を交渉する際のポイントです。
ポイント1:データで説明する。ナフサ価格の推移グラフ、仕入先からの値上げ通知書、原材料費の変動と自社製品の原価率の変化を資料にまとめる。感情ではなくデータで説明する。
ポイント2:段階的な値上げを提案する。一度に15%の値上げを求めると拒否されやすい。「今回8%、半年後にさらに7%」のように段階的に提案する。
ポイント3:下請法・独占禁止法を味方にする。親事業者が下請事業者に対して、原材料費の上昇分の価格転嫁を一方的に拒否することは、下請法上の「買いたたき」に該当する可能性がある。公正取引委員会は「価格転嫁の円滑化」を重点施策としており、買いたたきの監視を強化している。この事実を知っておくだけで、交渉の姿勢が変わります。
ポイント4:代替案を準備する。値上げが完全に拒否された場合、①仕様の変更(原材料のグレード変更・代替材料への切り替え)でコストを下げる提案、②発注ロットの拡大(まとめ発注でスケールメリットを出す)の提案、を用意しておく。
値上げ交渉の方法は個人事業主の値上げ交渉術を参照してください。
中長期的な原材料費リスクヘッジ戦略
ナフサ価格の変動は今後も続きます。短期的な対応だけでなく、中長期的にリスクを軽減する戦略を導入してください。
戦略1:契約にスライド条項を導入する。納品先との契約に「原材料費が一定割合以上変動した場合、製品価格を見直す」条項を盛り込む。これにより、原材料費の変動リスクを納品先と共有できる。
戦略2:複数の仕入先を確保する。原材料の仕入先が1社だけの場合、その1社の値上げをそのまま受け入れるしかない。複数の仕入先から見積もりを取り、最も有利な条件で仕入れる。仕入先間の競争原理が働き、値上げ幅を抑えられるケースがある。
戦略3:代替原材料の研究開発。ナフサ由来の原材料に代わる、バイオマス由来の原材料やリサイクル原材料の採用を検討する。環境対応(脱炭素、SDGs)の観点でも評価され、納品先へのアピールポイントになる。
戦略4:製品の付加価値を高める。原材料費が上がっても、製品の付加価値(品質、機能、デザイン、サービス)を高めれば、価格転嫁が容認されやすくなる。「安い汎用品」ではなく「高付加価値品」にシフトすることで、原材料費変動の影響を相対的に小さくできる。
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