ファクタリングで受け取った資金を使い込んでしまい、売掛先から入金があったのにファクタリング会社に送金できない。あるいは、売掛先が倒産して入金自体がなくなった。
この状況に陥った経営者は、パニックになって判断を誤りがちです。しかし、対処法は存在します。放置すれば法的手段に発展しますが、早期に動けば分割交渉や法的整理によって事態を収拾できる可能性があります。
この記事では、ファクタリングの支払いができなくなった場合に何が起きるか、具体的な対処法、そして弁護士に相談すべきタイミングを解説します。
ファクタリングで「払えない」とはどういう状態か
ファクタリングは融資ではなく売掛金の売買です。2社間ファクタリングの場合、売掛先から入金された代金をファクタリング会社に送金する義務があります。この送金ができない状態が「払えない」に該当します。
具体的には以下の3パターンがあります。
1つ目は、売掛先から入金があったが、運転資金に流用してしまいファクタリング会社への送金資金がないケース。これは最も多いパターンであり、契約違反(債務不履行)に該当します。
2つ目は、売掛先が倒産または支払い拒否をして入金自体がないケース。契約が「償還請求権なし(ノンリコース)」であれば、原則として利用企業に弁済義務はありません。ただし契約書の内容によるため、必ず確認してください。
3つ目は、そもそも売掛金が架空であったケース。これは詐欺罪に該当し、刑事罰の対象です。本記事では扱いません。
払えない場合に起きること(時系列)
1〜3日後:ファクタリング会社から督促連絡
送金期日を過ぎると、まず電話やメールで支払い確認の連絡が来ます。この段階で正直に状況を説明し、分割交渉を申し出ることが最も有効です。
1〜2週間後:書面による正式な督促
電話での解決が見込めない場合、内容証明郵便等の書面による正式な督促が届きます。法的手続きへの移行を示唆する文言が含まれることが一般的です。
1〜3ヶ月後:法的手続きの開始
交渉が成立しない場合、ファクタリング会社は以下の法的手段を取る可能性があります。支払督促の申立て(裁判所を通じた督促)。民事訴訟の提起。動産・不動産の差押え申立て。
悪質な場合:刑事告訴
売掛金の使い込みが悪質(計画的な流用、架空売掛金の使用等)と判断された場合、詐欺罪や横領罪で刑事告訴される可能性があります。
払えない場合の5つの対処法
対処法1:ファクタリング会社に分割交渉を申し出る
最も現実的な第一歩です。ファクタリング会社も、法的手続きにはコスト(弁護士費用・裁判費用・時間)がかかるため、分割での回収に応じるケースは少なくありません。
交渉のポイントは、売掛先からの入金日と自社の資金繰り見通しを具体的に示すこと。「いつ・いくら・どのように支払うか」を明確に提示できれば、交渉が成立する可能性が高まります。口頭ではなく書面(メール可)で交渉記録を残してください。
対処法2:弁護士に相談する
ファクタリング会社との交渉が難航した場合、または契約内容に不審な点がある場合は、弁護士に相談してください。
特に以下の場合は弁護士の介入が有効です。契約書に「償還請求権あり」が含まれている場合(実質的な貸付である可能性)。手数料が年利換算で数百%に相当する場合(暴利として無効を主張できる可能性)。ファクタリング会社から脅迫的な取り立てを受けている場合。
法テラス(0570-078374)では無料の法律相談を受けられます。ファクタリング被害を扱う弁護士事務所も増えています。
対処法3:別の資金調達で送金資金を確保する
ファクタリング会社への送金資金を別の方法で確保する方法です。ビジネスローンで短期資金を借入することが選択肢になります。ただし、ファクタリングでファクタリングの支払いを回す「自転車操業」は資金繰りの悪化を加速させるため推奨しません。
対処法4:債務整理を検討する
ファクタリング以外にも複数の借入があり、全体的に返済不能な状態であれば、債務整理(任意整理・民事再生・自己破産)を検討する段階です。
任意整理は弁護士が債権者と交渉し、返済条件(金額・期間)を変更する手続きです。裁判所を通さないため手続きが比較的簡易で、事業を継続しながら返済を進められます。
民事再生は裁判所の関与のもとで債務を大幅に減額(最大90%カット)し、残りを分割返済する手続きです。事業を継続できますが、手続きが複雑で費用もかかります。
自己破産は最終手段です。法人の場合は法人破産となり、事業は原則として終了します。
対処法5:売掛先との関係を整理する
売掛先が支払わないことが原因でファクタリング会社に送金できない場合は、売掛先への督促・法的措置を検討します。内容証明郵便の送付、支払督促の申立て、少額訴訟(60万円以下の場合)などの手段があります。
絶対にやってはいけないこと
ファクタリング会社からの連絡を無視すること。無視すればするほど法的手続きに移行する確率が上がります。
別のファクタリング会社に同じ売掛金を二重譲渡すること。これは詐欺罪に該当し、刑事罰の対象です。
闇金やヤミ金融から借りて返済すること。状況が圧倒的に悪化します。
そもそもファクタリングで「払えない」状況に陥らないために
ファクタリングは「一時的なつなぎ資金」として利用すべきです。毎月恒常的に利用して運転資金を回す使い方は、手数料負担が積み上がり、いずれ払えない状況を招きます。
ファクタリングの利用頻度が月1回以上になっている場合は、根本的な資金繰り改善が必要です(経営者が知っておくべき資金繰り改善の基本を参照)。
また、ファクタリング会社の選定段階で手数料率を比較し、コストを最小限に抑えることも重要です(ファクタリングおすすめ比較7選を参照)。