この記事でわかること
デジタル化が進み、消費者の購買行動や情報収集の手段が多様化する現代において、企業は従来のビジネスモデルだけでは競争力を維持できなくなっています。特に、BtoBtoC(B2B2C)モデルは、企業が消費者に直接アプローチするBtoC、または企業間で取引を行うBtoBの枠を超え、「企業→企業→消費者」という三層構造で新たな価値を生み出す仕組みとして注目されています。
本記事では、BtoBtoCの意味と特徴、従来型との違い、最新の活用事例、メリット・デメリット、今後の展望まで、実際のビジネス現場のリアルな事例も交えながら、分かりやすく解説します。
BtoBtoC(B2B2C)とは?その本質と定義
BtoBtoCの意味と構造
(B)
(B)
(C)
BtoBtoC(B2B2C)とは、「Business to Business to Consumer」の略で、企業(B)が他の企業(B)を介して、最終的に消費者(C)に商品やサービスを提供するビジネスモデルを指します。
このモデルの本質は、「直接消費者に販売するのではなく、消費者向けビジネスを展開する企業をサポートし、その企業を通じて消費者に価値を届ける」という点にあります。
従来のBtoB(Business to Business)は企業間取引、BtoC(Business to Consumer)は企業と消費者の直接取引ですが、BtoBtoCはその両者の強みを組み合わせ、「仲介役となる企業が消費者ニーズを把握し、メーカーやサービス提供企業にフィードバックすることで、より最適な商品・サービスを提供できる」点が大きな特徴です。
BtoBtoCが注目される背景
近年、BtoBtoCモデルが急速に拡大している背景には、以下のような社会的・技術的な要因があります。
- 消費者ニーズの多様化と細分化
消費者の価値観やライフスタイルが多様化し、従来の大量生産・大量販売型のビジネスでは対応しきれなくなっています。BtoBtoCモデルは、仲介企業が消費者の声を吸い上げ、メーカーやサービス提供者に迅速にフィードバックできるため、より柔軟な商品開発やサービス改善が可能です。 - デジタル技術の進化
ECサイトやプラットフォーム、モバイルアプリなどのデジタル技術が進化したことで、企業間・企業と消費者間の距離が縮まりました。BtoBtoCモデルは、こうしたデジタルチャネルを活用し、効率的かつ広範囲にリーチできるようになっています。 - サステナビリティや社会的責任への意識の高まり
企業が社会的責任(CSR)やサステナビリティを重視する中で、消費者の声を直接反映した商品・サービスの開発が求められています。BtoBtoCモデルは、仲介企業を通じて消費者のニーズや社会的課題を把握しやすい構造となっています。
BtoBtoCの代表的な業種・業態と現場事例
業種・サービス | 仲介企業(B) | 提供先企業またはメーカー(B) | 最終消費者(C) | 具体例 |
---|---|---|---|---|
マーケットプレイス型ECサイト | Amazon、楽天市場、Lazada | 出店ブランド・メーカー | 一般消費者 | Amazonや楽天市場でのショッピング |
食品卸売・飲食店支援 | メトロ(METRO) | 飲食店 | 飲食店の来店客 | メトロが飲食店に食材+経営支援 |
情報仲介プラットフォーム | ホットペッパーグルメ、食べログ | 飲食店 | 予約・来店する消費者 | 飲食店予約サイト |
サブスクリプションサービス | Spotify、Netflix | 音楽・映像コンテンツ提供者 | 利用者 | 音楽・動画配信 |
シェアリングエコノミー/即日配達 | Uber Eats、Instacart | 飲食店・小売店 | 宅配を注文する消費者 | フードデリバリー・食料品即日配達 |
流通・卸売業 | 問屋、卸売業者 | メーカー | 小売店経由で消費者 | メーカー → 卸売業者 → 小売店 → 消費者 |
1. ECプラットフォーム・マーケットプレイス
現代のBtoBtoCモデルの代表格が、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのマーケットプレイス型ECサイトです。
メーカーやブランド(B)は、これらのプラットフォーム(B)に出店し、消費者(C)に商品を販売します。プラットフォームは集客・決済・配送・カスタマーサポートなどの機能を提供し、出店企業の販売活動を強力に後押ししています。
たとえば、楽天市場では、ECコンサルタントが出店企業に対して売上向上のためのアドバイスやプロモーション施策を提案し、消費者には楽天ポイントやキャンペーンなどで購買意欲を喚起しています。この三者の連携が、BtoBtoCの理想的な形といえるでしょう。
2. 食品卸売業・飲食店支援
メトロ(METRO)は、飲食店向けの会員制食品卸売店として、BtoBtoCモデルを体現しています。
単に食材やワインを卸すだけでなく、飲食店の経営支援やメニュー提案などのコンサルティングサービスも提供。飲食店の売上が伸びれば、その先の消費者により良い料理やサービスが届けられ、結果的にメトロ自身の売上にもつながります。
このように、「自社の顧客(飲食店)の成功=自社の成功」という考え方が、BtoBtoCモデルの根幹にあります。
3. 小売業・流通業
コンビニエンスストアや家電量販店もBtoBtoCの典型例です。
メーカー(B)が商品を卸し、小売店(B)が消費者(C)に販売します。近年はPOSデータや購買履歴などのビッグデータを活用し、消費者ニーズを分析してメーカーにフィードバックする取り組みも一般化。
これにより、メーカーはより消費者志向の商品開発やマーケティングが可能となっています。
4. サービスプラットフォーム・情報仲介
ホットペッパーグルメやぐるなび、食べログなどの飲食店情報サイトもBtoBtoCモデルです。
飲食店(B)が情報を掲載し、消費者(C)がその情報をもとに予約や来店を行います。プラットフォームは集客や予約管理、口コミ機能などを提供し、飲食店の業務効率化と消費者の利便性向上を同時に実現しています。
5. サブスクリプション・シェアリングサービス
近年急速に拡大しているのが、サブスクリプション型サービスやシェアリングエコノミーです。
たとえば、音楽や動画のサブスクサービスでは、コンテンツ提供者(B)がプラットフォーム(B)を通じて消費者(C)にサービスを提供。プラットフォームは利用データを分析し、パーソナライズされたレコメンドや新たな収益モデルを生み出しています。
また、Uber Eatsや出前館のようなフードデリバリーサービスも、飲食店(B)と消費者(C)を仲介するBtoBtoCの一例です。
BtoBtoCモデルの最新動向と進化

D2Cとの融合とチャネル多様化
近年は、D2C(Direct to Consumer)モデルとBtoBtoCモデルのハイブリッド化が進んでいます。
多くのD2Cブランドは自社ECサイトで消費者に直接販売しつつ、Amazonや楽天市場などのプラットフォームにも出店し、複数チャネルで消費者接点を拡大しています。
これにより、ブランドは自社の世界観やストーリーを直接伝えつつ、プラットフォームの集客力や利便性も享受できます。
データドリブン経営とAI活用
BtoBtoCモデルでは、仲介企業が消費者データを蓄積・分析し、メーカーやサービス提供者にフィードバックすることで、商品開発やマーケティング戦略の高度化が進んでいます。
AIやビッグデータを活用した需要予測、パーソナライズされたプロモーション、チャットボットによるカスタマーサポートなど、テクノロジーの進化がBtoBtoCの価値をさらに高めています。
サステナビリティ・社会課題解決型BtoBtoC
環境配慮や社会的価値の創出を重視する企業が増える中、BtoBtoCモデルを活用してサステナブルな商品やサービスを展開する事例も増加しています。
たとえば、再生素材メーカーがアパレルメーカーを通じて消費者にエコ商品を届けたり、健康食品メーカーがドラッグストアやECサイトを通じて消費者の健康意識に応える商品を展開したりと、社会課題解決型のBtoBtoCビジネスが注目されています。
BtoBtoCモデルのメリットとデメリット
BtoBtoCのメリット
BtoBtoCモデルの最大のメリットは、消費者へのリーチ拡大と効率的な流通・販売の実現です。
メーカーやサービス提供者は、自社だけでは難しい消費者層へのアクセスや、マーケティング・販売コストの削減、ブランド認知の向上など、多くの恩恵を受けられます。
また、仲介企業は新たな収益源やビジネスチャンスを獲得でき、消費者は多様な商品・サービスを便利に比較・選択できるという「三方よし」の関係性が生まれます。
BtoBtoCのデメリット
一方で、仲介企業との連携強化や収益配分、ブランドコントロール、消費者データの共有といった課題も存在します。
特に、プラットフォーム依存が強まると、手数料負担や自社ブランドの希薄化、消費者との直接的な関係構築が難しくなるリスクも指摘されています。
また、仲介企業が消費者データを独占するケースでは、メーカーやサービス提供者が消費者インサイトを十分に活用できないという問題も生じます。
最新事例で見るBtoBtoCの進化

国内事例
楽天市場
楽天市場は、国内最大級のECプラットフォームとして、約5万の事業者が出店し、消費者に多様な商品を提供しています。ECコンサルタントによるサポートや、楽天ポイントによる集客力が、事業者と消費者双方の成長を促進しています。
メトロ(METRO)
飲食店向けの会員制卸売店であるメトロは、食材やワインの卸売に加え、経営サポートやメニュー提案などのコンサルティングサービスも提供。飲食店の売上が伸びれば、その先の消費者により良い料理やサービスが届けられ、結果的にメトロ自身の売上にもつながるBtoBtoCモデルを体現しています。
LIMEX(TBM)
日本発の新素材「LIMEX」は、素材メーカー(B)が企業(B)を通じて消費者(C)にサステナブルな製品を提供しています。環境課題への対応や企業ブランディングの向上、消費者のエコ志向に応えることで、三方よしの関係性を実現しています。
海外事例
Amazon
Amazonは、世界最大級のBtoBtoC企業として、メーカーやブランドに対し、物流・決済・カスタマーサービスなどの包括的なプラットフォームを提供しています。消費者は利便性の高い購買体験を享受でき、出店企業はグローバル市場へのアクセスが可能です。
Instacart
Instacartは、米国発の食料品即日配達サービス。スーパーや小売店(B)と消費者(C)を結びつけるBtoBtoCモデルです。店舗はInstacartのシステムを活用して注文処理や配送を効率化し、消費者は自宅にいながら多様な店舗の商品を購入できます。
ほとんどのビジネスはBtoBtoCで成り立っている?

実は、私たちが日常的に利用している多くのサービスや商品は、BtoBtoCモデルで成り立っています。
たとえば、お菓子メーカーは消費者向けに製品を製造していますが、実際には流通業者や小売店を経由して消費者の手元に届きます。
また、飲食店に食材や飲料を卸すメーカーも、最終的には消費者が料理やワインを注文しないと売上になりません。このように、BtoBtoCは現代ビジネスの基盤となっているのです。
これからのBtoBtoC
テクノロジーによる進化
今後は、AIやIoT、ブロックチェーンなどの先端技術を活用したBtoBtoCビジネスの進化が期待されています。
たとえば、AIによる需要予測やパーソナライズドマーケティング、IoTを活用したサプライチェーンの最適化、ブロックチェーンによるトレーサビリティの強化など、テクノロジーがBtoBtoCの新たな価値を生み出します。
サステナビリティと社会的価値の追求
消費者のサステナビリティ志向や社会的価値への関心が高まる中、BtoBtoCモデルを通じて、企業は社会課題の解決や環境配慮型ビジネスを推進することが求められます。
たとえば、サステナブル素材の普及やフェアトレード商品の拡大、地域創生型ビジネスなど、社会的価値を重視したBtoBtoCビジネスが今後ますます重要になるでしょう。
まとめ
BtoBtoC(B2B2C)は、企業・仲介企業・消費者の三者それぞれに価値をもたらす、現代ビジネスの中核的なモデルです。
ECサイトや流通業、サービスプラットフォームなど、私たちの生活に身近な多くの現場で活用されており、消費者ニーズの変化やデジタル技術の進展に合わせて、今後もさらなる成長が期待されます。
自社のビジネスがBtoBtoCに該当する場合は、直接の取引先だけでなく、その先のエンドユーザーの動向やニーズを常に把握し、仲介企業との協業を強化することが、持続的な成長の鍵となります。
BtoBtoCの意味と活用現場の解説事例まとめとして、今後もこのビジネスモデルの進化に注目し、柔軟な戦略を展開していくことが重要です。
自社のビジネスモデルを見直し、BtoBtoCの視点を取り入れることで、より多くの価値を社会と消費者に届けていきましょう。
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